開業税理士が令和2年確定申告を詳細解説|令和2年所得税確定申告

BLOG

お役立ちブログ

2021.01.25

税金

テーマ:

どうなる?令和2年分の確定申告!いま一度、留意点を解説

 令和2年分の個人確定申告の時期が近づいてきました。令和2年分の所得税確定申告においては、給与所得控除や基礎控除の見直し、青色申告特別控除の取扱い変更などの所得計算に直接影響する大きな改正があり、また、新型コロナウイルス感染症の影響に伴って助成金が支給されたりと、昨年までの確定申告とは異なる点が多く、今まで以上に注意が必要です。

 令和2年分確定申告に向けて、国税庁からも「令和2年分の確定申告においてご注意いただきたい事項」が公表されていますが、今回は、いま一度、令和2年分確定申告書の作成にあたって留意すべき点を解説します。

そもそも、個人確定申告とは

 法人の場合は決算月を自由に決められますが、個人の場合にはそうはいきません。個人の場合には、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得を計算し、それに対する所得税額を確定させ、期限までに申告しなければなりません。この税額を確定させ、申告する一連の手続きを確定申告と呼びます。

確定申告が必要な人は

 例えば、次のような個人は所得税の確定申告をする必要があります。

 ・給与の年間収入が2,000万円を超える人
 ・給与所得、退職所得以外の所得が20万円を超える人(2か所から給与がある人は注意です)
 ・源泉徴収のない給与等の支払を受けている人

 給与所得者で年末調整済でも医療費控除や寄附金控除を受けるために還付申告をすることができます。なお、通常であれば、給与所得以外の所得が20万円以下であるときは確定申告の必要はありませんが、還付申告書を提出する場合、その20万円以下の所得も併せて申告することになります。ご注意ください。

確定申告はいつからいつまで

 令和2年分の所得税の確定申告書は、令和3年2月16日から同年3月15日までe-Taxによる電子申告、または住所地等の所轄税務署へ紙で提出する必要があります(還付申告書については、同年2月15日以前でも提出が可能)。

 ちなみに、個人事業主では、所得税以外に消費税の確定申告が必要となる場合がありますが、消費税の確定申告書は所得税の申告期限と異なり、原則、同年3月31日までとなります。

令和2年分確定申告における留意点

令和2年分から適用される主な改正事項

 令和2年分の確定申告から適用となる改正項目を、いま一度、確認しておきましょう。

  ・給与所得控除等から基礎控除への控除振替
  ・給与所得控除等の見直し
  ・所得金額調整控除の創設
  ・青色申告特別控除の要件改正
  ・ひとり親控除の創設
  ・開催中止イベントに対する「チケット寄附税制」(コロナ関連)

給与所得控除等から基礎控除へ!控除額10万円が振替

 近年の副業やフリーランスといった働き方の多様化に伴い、給与所得控除等の見直しが行われ、10万円が基礎控除へ振替えられました。実はこの改正、平成30年度税制改正によるものです。しかしながら、国民の税負担に直結する重要な改正であったため、周知期間を1年設け、満を持して令和2年分より適用となりました。

 今までの所得税は、終身雇用を前提として年金生活に入るライフコースを念頭に、給与所得控除や公的年金等控除が設けられていました。しかしながら、近年の働き方の多様化に伴って、その前提が必ずしも当てはまらなくなってきており、広く控除額が行き渡るように制度設計が変更されました。

 給与所得者や公的年金受給者については、この改正による税負担に変更はありませんが、フリーランスや個人事業主にとっては控除額が10万円増加するため、税負担は減少することとなります。

増税?給与所得控除など控除額が見直し

 給与所得控除額の見直し

 給与所得控除額について、昨年までは給与収入が1,000万円を超える場合には、給与所得控除が220万円(上限)とされていましたが、令和2年分からは、給与収入が850万円を超える場合には、給与所得控除額の上限額が195万円へと引き下げられました。給与収入が850万円を超える方にとっては、増税となります。

給与等の収入金額 給与所得控除額
令和2年分 令和元年分
~162万5千円 55万円 65万円
     ~180万円 その収入×40%-10万円 その収入×40%
    ~360万円 その収入×30%+8万円 その収入×30%+18万円
    ~660万円 その収入×20%+44万円 その収入×20%+54万円
    ~850万円 その収入×10%+110万円 その収入×10%+120万円
~1,000万円 195万円
1,000万円超 220万円

 

公的年金等控除の見直し

 昨年までは公的年金等の収入による上限はありませんでしたが、令和2年分からは、1,000万円を超える場合には、195万5千円の上限が設けられました。また、公的年金等以外の収入が1,000万円を超える場合には、控除額が引き下げられました。

基礎控除の見直し

 昨年までは一律に38万円の基礎控除が受けられましたが、令和2年分から48万円に引き上げられました。しかしながら、合計所得金額が2,400万円を超える場合には、逆に控除額が引き下げられます。更に、2,500万円を超える場合には、控除額が廃止となっています。従って、不動産や株式の譲渡などを含めた合計の所得金額が2,400万円を超える方にとっては、増税となります。

増税でも所得金額調整控除で調整

 給与所得控除及び公的年金等控除の見直しに伴い、一定の個人の税負担が増加しない措置として、所得金額調整控除が設けられました。

年間給与収入が850万円超の場合

 年間の給与収入が850万円を超える方のうち、23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族等を有する方は、社会政策的な見地から税負担が増加しないよう所得金額調整控除の適用があります。

給与収入と公的年金等収入を有する場合

 給与所得と公的年金等収入がある方は、それぞれの控除除が10万円引き下げられることに伴う税負担の増加が生じないよう所得金額調整控除の適用があります。

e-Taxが有利!青色申告特別控除の要件追加

 65万円の青色申告特別控除の適用要件に「e-Taxによる電子申告」又は「電子帳簿保存」を行うことが追加されました。電子帳簿保存については、現行制度では適用するためのハードルが高いことから、従来通り65万円の特別控除を適用しようとする事業者には、e-Taxによる電子申告が実質的な要件となるでしょう。新型コロナウイルス感染症拡大の影響からも、令和2年分確定申告は、e-Taxが大きく普及するものと思われます。

未婚でも…ひとり親控除が新たに創設

 従来は未婚のひとり親には所得控除の適用はありませんでした。令和2年分からは、婚姻の有無や性別を問わず、生計を一にする子供をもつ合計所得金額が500万円以下の単身者に対して、35万円のひとり親控除が創設されました。また、これ以外の寡婦(夫と死別・離婚した女性で一定の要件を満たす方)については、寡婦控除(27万円)の適用にあたり、500万円の所得制限が設けられました。

本人性別 扶養親族 死別 離別 ひとり親
男女問わず 子供 35万円 35万円 35万円
女性 子供以外 27万円 27万円
なし 27万円

医療費控除の明細書添付、経過措置が終了

 医療費控除の適用にあたり、平成29年度税制改正により、医療費の領収書の添付又は提示に代えて「医療費控除の明細書」の添付が必要となりましたが、経過措置により令和元年分までは、従来通りの領収書の添付又は提示が認められていました。令和2年分からは、経過措置が終了したことから、医療費控除の明細書の添付がない場合には、医療費控除の適用が受けられなくなります

新型コロナウイルス関連

「チケット寄附税制」で文化芸術活動を救おう

 新型コロナウイルスの影響でイベントが中止等になった場合において、主催者に対して入場料等の払戻しの請求をしなかったときは、その入場料について、寄附⾦控除(所得控除⼜は税額控除)の適用を受けることができます。

 ただし、この適用を受けるためには、まずイベント主催者が文部科学大臣から対象となるイベントについての指定を受け、主催者から払戻請求権放棄証明書の発行を受けなければなりません。対象イベントは文化庁ホームページに公表がありますので、昨年、参加予定だったイベントが新型コロナウイルスの影響で中止になり、チケットの払戻をしていない方は、対象となるか確認をしてみてください。

 なお、この適用を受けるために確定申告をした場合は、ふるさと納税ワンストップ特例の適用は受けられませんので、ふるさと納税も併せて確定申告をする必要がありますので、ご注意ください。

国や地方公共団体からの助成金をもらったら

 新型コロナウイルス感染症等の影響に伴い、国や地方公共団体から個人として助成金の支給を受けた場合の課税関係については、所得税法やその支給の根拠となった法令に非課税所得とする規定がない限り、課税所得として所得税が課税されることとなります。

 非課税所得とならない場合には、事業に関連する助成金については「事業所得」、事業に関連しない助成金で臨時的に支給されるものについては「一時所得」、それらに該当しない場合には「雑所得」として確定申告が必要となりますが、所得区分に応じ、一定の金額以下であれば、申告を必要としないケースもあります。個別の取扱いについては、お近くの税務署や支給元の国や地方公共団体へ確認をしてみましょう。

■新型コロナウイルス感染症等の影響に関連して国等から⽀給される主な助成⾦等の課税関係(例⽰) 

非課税と
なるもの

⽀給の根拠となる法律が⾮課税の根拠となるもの
【雇⽤保険臨時特例法】
 ・新型コロナウイルス感染症対応休業⽀援⾦
 ・新型コロナウイルス感染症対応休業給付⾦
【新型コロナ税特法】
 ・特別定額給付⾦(10万円)
 ・子育て世帯への臨時特別給付⾦
【所得税法】
 〇学資として⽀給される⾦品
 ・学⽣⽀援緊急給付⾦
 〇⼼身⼜は資産に加えられた損害について⽀給を受ける相当の⾒舞⾦
 ・低所得のひとり親世帯への臨時特別給付⾦
 ・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労⾦
 ・企業主導型ベビーシッター利⽤者⽀援事業の特例措置における割引券
 ・東京都のベビーシッター利⽤⽀援事業における助成

課税と
なるもの
【事業所得等に区分されるもの】
 ・持続化給付⾦(事業所得者向け)
 ・家賃⽀援給付⾦
 ・農林漁業者への経営継続補助⾦
 ・文化芸術・スポーツ活動の継続⽀援
 ・東京都の感染拡⼤防止協⼒⾦
 ・雇⽤調整助成⾦
 ・⼩学校休業等対応助成⾦
 ・⼩学校休業等対応⽀援⾦
【一時所得に区分されるもの】
 ・持続化給付⾦(給与所得者向け)
 ・Go Toキャンペーン事業における給付⾦
【雑所得に区分されるもの】
 ・持続化給付⾦(雑所得者向け)

令和元年分の確定申告書をまだ提出していない…

 国税庁からの「令和2年分確定申告における感染症対策に関するFAQ」によれば、令和元年分の確定申告は既に大半の方が確定申告を済ませているとのことですが、新型コロナウイルス感染症の影響等で、今後、令和元年分の確定申告を行う場合、令和2年分の確定申告期限までに申告・納付を行わないと「期限後申告」として取り扱われることとなりますので、ご注意ください。

 また、令和元年分の確定申告書を提出する前に、その他の申告書や申請書等(例えば、青色申告承認申請書)を提出した場合においても、令和元年分の確定申告は「期限後申告」として取り扱われることとなります。

令和2年分確定申告も申告・納付期限の個別延長は

 昨年の確定申告においても、個別の申告・納付期限の個別延長が認められていましたが、令和2年分においても、例えば、納税者、税理士(事務所職員)、法人の経理担当者等が感染症に感染、または感染者への濃厚接触の事実があるなどにより、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合は、個別に期限延長が認められることとなります。

 また、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化し、資金繰りが厳しく納付が困難となった場合においても、税務署に申請を行うことで、原則として1年間、納付が猶予されます(延滞税は、軽減又は免除となります)。詳しくは、各国税局の国税局猶予相談センターにお電話にてご相談ください。

緊急事態宣言下における確定申告

 令和3年1月8日に東京都をはじめとする関東1都3県、また同年1月14日に大阪、愛知、福岡を含む2府5県に緊急事態宣言が再発出されました。令和2年分の確定申告は、令和3年2月16日から同年3月15日までとなっており、今のところ緊急事態宣言解除後に開始される見込みとなっています(現状では、国税庁も確定申告は通常通り行う見込みとしているようです)。

 しかしながら、私の所属する東京税理士会支部においても、例年1月下旬から実施される税理士による無料申告相談が中止になるなど、納税者側からしてみると、相当の影響があると予想されます。期限内において確定申告ができない場合の取扱いは既に説明の通りですが、そもそも事前に税務署や税理士に相談することができない、とお困りの方も多いことでしょう。

 その点、幸いにも当事務所は完全オンラインでサービスを提供しております。
 画面を共有してのe-Tax操作に関する相談も対応可能ですので、お気軽にご相談ください。

税理士による緊急無料申告相談を実施します

 例年、税理士会主催で行われる税理士による無料申告相談。無料申告相談で申告書を作成し、確定申告を済ませていた方も多くいらっしゃるでしょう。しかしながら、令和2年分の確定申告にあたっては、緊急事態宣言の再発出により無料申告相談が中止となる地域も多くあるものと思われます(現に私の所属する支部は一部中止となりました)。

 無料申告相談が中止となってお困りの納税者の方々のために、下記日時にて、先着10名様に限り、オンライン無料申告相談を実施することといたしました。無料申告相談では、小規模納税者の所得税及び復興特別所得税・個人消費税、年金受給者並びに給与所得者の所得税及び復興特別所得税の申告書(土地、建物及び株式などの譲渡所得がある場合を除く)を作成することを想定しています。

 無料申告相談をご希望の方は、当事務所ホームページの無料相談画面から事前予約を行ってください。

無料申告相談日時

 令和3年2月1日(月)、2日(火)、8日(月)、9日(火)
  いずれの日程も①10:00~ ②11:30~ ③14:00~の3回、各1時間を予定
  当事務所ホームページ「無料相談予約」画面から事前予約必要

対象税目  所得税及び復興特別所得税(譲渡所得を除く)、個人消費税
当日準備するもの

【オンライン】カメラ付きPC、電話(固定、携帯いずれでも可)
 ※Wifi環境下でBellfaceを利用したWeb相談を実施
【無料申告相談】
 ・前年の申告書等の控え、源泉徴収票など申告に必要な書類
 ・計算器具、筆記具
 ・マイナンバーカード、ICカードリーダライタ
  (ご自身でe-Taxで送信して提出される方)

PAGE TOP